『みいちゃんと山田さん』提示された結末から見る みいちゃんはなぜ殺されたのか

みいちゃんと山田さん・山田マミ 連載中
マンガなびイメージ
本ページにはプロモーションが含まれています
『みいちゃんと山田さん』のこれまでの主要な展開や、みいちゃんの将来の結末として示されている描写、関係者の犯人候補に深く触れてネタバレしています。連載を最新話付近まで読了済みの方向けの内容ですので、未読の方はご注意ください。

みいちゃんと山田さん』では、かなり早い段階で「一年後にみいちゃんは薬物で拷問され、殺される」と告げられます。この未来の断片を手がかりに、「なぜ彼女は殺されたのか」という問いが最後まで読み手につきまといます。山田さんと過ごした一年間のあたたかさと、宮城の山中で見つかる遺体との落差。そのあいだにあった選択や見落としをたどりながら、提示された結末の重さをあらためて整理していきます。

この記事のポイント
  • 一年後に示される死の重さ
  • 山田さん視点で積もる違和感
  • 家庭と教育と福祉の抜け落ち
  • ムウちゃんとの分岐が示す差
  • 現時点で追える犯人候補の線
スポンサーリンク

結末へ向かう一年間が示した行き先の狭さ

最初から「一年後に殺される」と宣告された主人公を追う構成は、それだけで強い制約を生みます。読者はどれだけ温かいシーンを読んでも、最後に待っているのが山中で見つかった遺体だと知っているからです。明るい場面ほど、その後に訪れる拷問と殺害のイメージが頭にちらつきます。

しかも、提示されているのは「覚醒剤を打たれ、爪や歯がボロボロになるほど痛めつけられた末の殺害」というかなり具体的な未来です。交通事故や突発的な事件ではなく、時間をかけて痛めつける相手が存在します。ここで、読者は自然と「誰がそこまでやるのか」「どうやってそこまで追い込まれたのか」を考えざるをえません。

この一年間は、単に「死ぬまでのカウントダウン」ではなく、「選択肢が閉じていく過程」として描かれています。家族、学校、福祉、仕事。どこか一つでも機能していれば、宮城の山中に遺棄される未来からは外れたかもしれません。けれど実際には、どのルートも細く、途中で途切れてしまいます。

一方で、山田さんと暮らす短い同居期間は、読者にとってもみいちゃんにとっても、唯一の安堵の時間です。家のルールを覚えようと頑張り、ちょっとした失敗で落ち込みながらも、彼女なりに「普通の生活」に近づこうとします。その姿が丁寧に描かれるほど、読者はあの未来との落差に息苦しさを覚えます。

この一年間は、奇跡のような一手で未来をねじ曲げる物語ではありません。むしろ、小さな可能性が一つずつ潰れていき、「この先に残された道はどこか」という問いだけが残っていく流れです。提示された結末は、その先にある最悪の出口として、ずっと背後に貼り付いたまま動きません。

冒頭の死の宣告が読み手に与える圧力

最初に「一年後の死」を見せる構成は、読者の読み方を大きく変えます。通常のサスペンスなら、「この出会いが彼女の運命を変えるかもしれない」と期待しながら読み進めます。しかしこの作品では、どんな出会いも「それでも殺される」という事実にぶつかります。

山田さんが優しく接し、同居を始めた場面も、読者の頭には未来の遺体が重なります。キチィランドに一緒に行き、家でささやかな食事を分け合うシーンは、本来ならば幸福な日常の断片です。それでも「ここで終わってくれたらいいのに」と感じてしまうのは、冒頭で突きつけられた未来のせいです。

この宣告は、単なるショッキングな導入ではありません。ページをめくるたびに、「いま起きていることが、どう未来の殺害に接続するのか」という視点を読者に強制します。登場人物の言葉や行動が、すべて“未来の死”に向けた伏線に見えてしまうのです。

結果として、みいちゃんのちょっとした選択ミスも、普段なら見過ごすような無理解も、すべてが重く刺さります。この圧力の中で読み続けることで、読者は「一つひとつは小さな出来事だったのに、それらが集まると殺害にまで至ってしまう」という感覚を体で味わうことになります。

山田さんの視点で浮かぶ小さな違和感の積み重ね

物語の多くは山田さんの視点で描かれます。ここが重要です。読者は山田さんと同じように、最初は「ちょっと変わった後輩」くらいの距離感でみいちゃんを見るところから始めます。そこに少しずつ、違和感が積み重なっていきます。

文字の読み書きが極端に苦手で、数字もほとんど扱えない。常識的なルールがなかなか入っていかない。暴力を振るう彼氏の話をしても、それを問題だと認識していない様子。こうした描写が続くたびに、「これは個人の性格だけでは説明できない」と気づかされます。

同時に、山田さんは彼女の純粋さや、誰かに褒められたいという切実な欲求も見ています。だからこそ、夜の仕事やDVの話を聞くたびに、「この子がなぜここにいるのか」という問いが強まっていきます。読者もまた、その視線に引きずられていきます。

しかし、山田さんが違和感に気づいたからといって、すぐに解決策が見つかるわけではありません。家庭環境や過去の経緯を聞いても、すでに手遅れになってしまった選択がいくつも連なっていることがわかるだけです。ここで浮かぶのは、「今の時点で取り返せるもの」と「もう戻らないもの」が明確に分かれているという厳しい事実です。

この視点の積み重ねによって、読者はみいちゃんの死を「単純な事件」ではなく、「たくさんの違和感を見過ごした結果」として受け取るようになります。結末へ向かう一年は、その違和感が形を持って立ち上がってくる時間でもあります。

『みいちゃんと山田さん』を今すぐ試し読み!

家庭と教育と福祉の穴が生きる基盤を崩していった

みいちゃんと山田さん・家庭と教育と福祉の穴が生きる基盤を崩していった

マンガなびイメージ

結末だけを見れば、「薬物で拷問されて殺された被害女性」というニュースで終わってしまいます。けれど作品は、その一行の裏側にある時間をかなり細かく描いています。そこには、家庭、学校、福祉のどこからも支えを得られなかった少女の姿があります。

まず出生の段階から、みいちゃんは重いハンデを背負っています。実の兄妹による近親相姦で生まれたという出自は、地域のタブーであり、彼女の存在そのものに陰を落とします。母親の中村芽衣子は読み書きや簡単な計算にも苦労し、育児を十分に行える状態ではありませんでした。

祖母もいましたが、彼女の幸福よりも世間体を優先する態度が目立ちます。特別支援学級を勧められた場面でも、「周りからどう見られるか」が判断基準になり、結果として支援の機会は拒否されました。ここで教育という最初のセーフティネットは失われます。

その後のみいちゃんは、学力だけでなく社会のルールも十分に身につけないまま成長します。中学でのいじめ、歪んだ性の知識、初体験の奪われ方。どれも本人の判断力の弱さと、周囲の大人不在が重なった結果です。おかしいと感じた瞬間に止めてくれる大人が、残念ながらどこにもいません。

福祉との関係も重要です。幼なじみのムウちゃんは、逮捕をきっかけに療育手帳を取り、作業所で働き始めます。同じように知的な困難を抱えていましたが、制度にアクセスしたことで、かろうじて安定した生活の足場を得ました。一方でみいちゃんは、「自分は普通だ」と言い張り、支援のルートを頑なに拒みます。

こうして見ると、結末の残酷さは偶然ではなく、家庭、教育、福祉が順番に機能しなかった結果として並んでいます。どこか一つでも違っていれば、薬物漬けにされて山中に捨てられる未来からは外れていたかもしれません。そこまで追い込まれてしまったこと自体が、提示された結末の重さになっています。

  • 出生段階から背負わされたタブーと偏見
  • 母親・祖母が世間体を優先した結果、支援機会を拒否
  • 特別支援学級を断念したことで教育のセーフティネット喪失
  • 読み書き・計算が身につかないまま社会に放り出された流れ
  • 福祉制度にアクセスできないまま夜の仕事へ流されていく経緯

出自と育ちが孤立を深めていく歩み

出自の問題は、みいちゃん本人の力ではどうにもできない部分です。実の兄妹の子どもとして生まれたことは、地域社会にとって大きなスキャンダルであり、本人が何をしたわけでもないのに冷たい目を向けられる原因になりました。幼いころから「存在そのものが迷惑」と扱われてきた感覚は、自己肯定感をほとんど育ててくれません。

母親も知的な課題を抱えており、生活能力も高くありません。父親は早々に姿を消し、祖母も問題を正面から見ることがありませんでした。誰もが「波風を立てない」ことを優先し、その結果として、みいちゃんは困っていても助けを求める術を身につけられませんでした。

学校でも状況は変わりません。特別支援学級を勧めた須崎先生は、数少ない理解者でした。しかし、家族の反対でそのルートは閉ざされます。読み書きが苦手なまま中学に上がり、周りとのギャップだけが広がっていきます。ここで支援につながらなかったことが、その後の「仕事の選び方」や「人との距離の取り方」にも影響していきます。

中学での初恋と、その裏で行われた悪意ある嘘も、孤立を深める要因になりました。「好きな人に好かれたければ体を使え」という誤った教えを信じてしまい、自分の体を差し出すことでしか人とつながれないと学んでしまいます。これが後のキャバクラや風俗での行動に直結します。

こうした歩みを丁寧に追っていくと、みいちゃんが「普通の進路」から遠ざかっていく理由が、少しずつ繋がっていきます。出自、育ち、学校での失敗が重なり、彼女には夜の仕事以外の選択肢が見えなくなっていきました。ここまでの段階で、すでに結末に向けたレールの多くが敷かれてしまっていると感じます。

ムウちゃんとの分岐が見せる支援を受ける力の差

項目 みいちゃん ムウちゃん
抱えている困難 学習障害・知的なつまずきがあるが診断・支援に至らない 知的障害として診断され、支援につながる入り口を得ている
福祉への態度 「自分は普通」と言い張り、福祉事務所に行くことを拒否 逮捕をきっかけに療育手帳を取得し、支援を受け入れる
仕事への向き合い方 福祉作業を「つまらない」と感じ、他者の反応がないと続かない 単調な作業でも完成物が積み上がること自体に喜びを見出す
現在の生活の方向 夜の世界と搾取の連鎖にとどまり、結末の悲劇へ向かってしまう 作業所で働きながら、細いながらも安定した生活基盤を築き始める

ムウちゃんの存在は、みいちゃんの「もう一つの可能性」として描かれています。二人とも知的な困難を抱え、夜の世界に関わってきた過去があります。それでも、現在の立ち位置は大きく異なります。その差を生んだのは、生まれつきの能力だけではありません。

ムウちゃんは逮捕をきっかけに福祉とつながり、療育手帳を取得しました。作業所での仕事は単調ですが、ホチキス留めのような単純作業の中にも「完成したものが積み上がる喜び」を見いだしています。目の前の仕事に意味を見つける力がありました。

一方のみいちゃんは、同じような作業を「つまらない」と感じます。彼女の行動原理は、人からの反応に強く依存しています。「嬉しい」「楽しい」と言ってもらえる瞬間がないと、やる気が続きません。福祉の仕事は誰かに褒められる場面が少なく、彼女には魅力的に見えませんでした。

「一緒に福祉事務所に行こう」というムウちゃんの誘いを、みいちゃんはきっぱり断ります。「みいちゃんは違うから」と言い張る姿は、一見するとプライドの高さに見えますが、その裏には「障害者」のラベルを貼られることへの恐怖があります。自分の存在がさらに否定されるように感じてしまうからです。

この分岐点は、結末を考えるうえで外せません。同じようなスタートラインに立っていた二人が、支援を受け入れるかどうかで人生の方向を変えました。ムウちゃんは狭いながらも安定した通路を歩き始め、みいちゃんは夜の世界と搾取の連鎖に残されました。この差が、宮城の山中で見つかった遺体と、作業所で働く日常の分かれ目になっています。

『みいちゃんと山田さん』全巻を最短で揃えるならココ!

読者の声から見える『みいちゃんと山田さん』の受け止め方

明るい絵柄に惹かれて読み始めたら、想像以上に闇が深くて胸が苦しくなった。キャバクラでの仕事や人間関係の描写が妙にリアルで、ノンフィクションを読んでいるような感覚になる。

みいちゃんのような子は現実の公立小学校にも一学年に一人はいた、という感覚がある。福祉の申請が必要な人ほど申請できないという現実を突きつけられ、自分の周りの「見えていない子どもたち」を思い出してしまった。

作品としてはものすごく引き込まれるけれど、とにかくしんどい。救いが見えない場面が多く、人を選ぶタイプの作品だと感じた。

現時点の結末から読める犯人候補の線

みいちゃんと山田さん・犯人は誰?

マンガなびイメージ

連載中の現時点では、「誰が実際に手を下したのか」ははっきり描かれていません。ただ、提示されている未来の姿と、ここまでの描写をつなぎ合わせると、いくつかの候補が浮かび上がります。ここでは、作中で描かれている範囲だけを手がかりに整理してみます。

まず、多くの読者が真っ先に疑うのはDV彼氏のマオでしょう。自称IQの高さを誇りながら、みいちゃんには平然と暴力をふるい、街娼までさせて金を巻き上げてきました。一方で、みいちゃん以外には男女問わずペコペコする小心さも持ち合わせています。普段からここまで虐待的な関わりをしている相手であれば、「あの拷問と殺害もマオの仕業なのでは」と考えるのは自然な流れです。

さらにマオは、みいちゃんとラオス旅行の約束をしながら、実際には彼女を売り飛ばすつもりでいました。ところが当日、みいちゃんが寝坊して空港に来なかったため、身代わりのような形でマオ自身がブローカーらしき男に連れて行かれてしまいます。そのまま行方不明になっている以上、「宮城の山中で遺体が見つかる場面」に直接結びつけるのは難しくなってきます。

この経緯を踏まえると、マオはみいちゃんを搾取し、売ろうとしていた加害者であることは確実です。ただし、「宮城の山中で拷問と殺害を実行した人物」として断定できるだけの情報は、まだ足りていません。暴力と搾取の責任は重くても、最終的な実行犯とイコールにしてしまうのは早い段階だと感じます。

もう一人、作品の中で濃い影を落としているのがキャバクラ「Ephemere」の店長です。体験入店の時点からトラブル続きだったみいちゃんを、面白半分のようなノリで正式採用してしまう人物として登場します。一方で、プラコップを用意してグラスを割らないように気を配ったり、万引きで警察に呼ばれた際に迎えに行ったりと、世話を焼く場面も多く描かれています。

ただ、その「面倒見の良さ」が、そのまま優しさとは限りません。作中では、ロリ系で人気があったみいちゃんを、新大久保の風俗店に斡旋したのが店長であることが明かされます。さらに、みいちゃんの前にも薬物漬けになった子どもを含め、何人かを金村が経営するデリヘルへ流してきたことがほのめかされています。ここで店長は、夜の仕事と薬物ルートの“入り口”として繰り返し機能してきた人物として浮かび上がります。

この線をたどると、みいちゃんが「覚醒剤で拷問され、宮城の山中に遺棄される」という未来に至るまでのネットワークの一部に、店長が関わっている可能性は高く見えてきます。少なくとも、「その場しのぎで面倒を見ていた善人」という解釈では収まりません。利用価値があるからこそ甘く扱い、不要になればより過酷な場へ送り込む。そうした冷たい打算がにじんでいます。

現状をまとめると、マオは暴力と売買の企みでみいちゃんを追い詰めた存在、店長は風俗と薬物にアクセスさせる入口、そしてその先にいる金村側の人間たちが、薬物漬けと遺棄に関わる層としてぼんやりと見えてきます。ただし、誰がどの地点でどこまで関与したか、誰が最後の一線を越したのかまでは、現時点の描写では断定できません。

連載が続く中で、宮城の山中に至る具体的なルートや、関係者それぞれの役割がどこまで描かれるのかは、これから明らかになっていく部分です。いまの段階でできるのは、「提示された結末」と「ここまでの描写」を一度整理し、どこで道が狭まり、誰がその道を用意したのかを自分なりにつなげておくことだと思います。その作業を積み重ねながら、今後の更新を追っていくと、「みいちゃんはなぜ殺されたのか」という問いに対する答えも、少しずつ輪郭を変えていくはずです。

みいちゃんと山田さん』の続きは
ebookjapanですぐ読めます!
今すぐ『みいちゃんと山田さん』を読む

タイトルとURLをコピーしました